マツノヤひと・もよう学研究所

独断と臆見による人文学研究と時評

こうそう

「ひと-もよう学」草稿

「ひと-もよう学」草稿●人間は動物的な「もよう」を殆ど帯びずに生まれ出る。それが自然においてどのような生存へと結びつくか。道具を使用し、表象することにより植物を育て、動物をてなずける、あるいは他の人間と強調したり、敵対することにつながってき…

言語文化と想起

書物文化、およびインターネット社会は、「書く」、および「読む」という行為を食事や排泄と同じくらい欠かせない反射的で、感覚的な行為として完成させた。しかも、それらは思考する「精神」の営為として理解される。民族や国家、あるいは民衆といったカテ…

複製情報時代の情報(複製芸術時代の芸術、ならぬ)

以前、といってもずっと前だが、このブログにて「学融機関」というアイデアを扱ったことがある。文化をSDGsなどに絡めてPRし、現在への投資に活かしたり、遠隔地の文化財や行事などのサービスを取りまとめて、観光や地域振興に活かす拠点として、「大学」や…

言語文化と信用:劇的な学問

人文学は、言語とその信用の歴史に向き合わなければならない。 「考える」という事象は、ともかくも「信用」を中心にした紐帯――言語が通用するところの共同体をふくめた連関――を基盤としている。学問はその連関の精髄であるが、むしろ精髄であるがゆえに、多…

説話研究の意義

説話の研究は、じつに多面的な意義をもっている。 まず一つは、言語の構造の研究である。これまでの言語研究では自立して成立しうるかのような、文法的な側面がクローズ・アップされてきたが、言語は人と人とのあいだにはたらきかけ、あるいは生と死のあいだ…

研究、あるいは広げすぎた大風呂敷

雑多な分野に手を広げすぎたせいで、研究の全体像がぼやけてしまっている。 はじめは井本英一が記録したオリエントやヨーロッパのさまざまな伝承と、吉野裕子がまとめた陰陽五行説による農耕儀礼の比較検討が目的であった。犬をいけにえにしたり、死者の使い…

次代のフォークロアのために

人と人が接し、何らかの表象や指示――いわゆるコミュニケーションが行われるとき、それらが明確に伝わり、実行されるかどうかは不確実である。そのため、コミュニケーションをより「均質的」に、誰でも同じように享受できる手続きないしシステムが整っている…

言語文化:生と死のあいだに……

このブログでは、伝統的かつアカデミックな言語学とは異なる「言語についての学問」を追究するべく努力してきた。 模範的な言語学では、たとえば「ピエールがポールを殴る」という文を、名詞や動詞、3人称現在や主格・対格という文法的な要素に分解し、同程…

神話から文藝、文藝から科学・教養……マニフェスト

この数日間、水銀朱についての研究から派生し、鉄や銅、礬類やナトリウム、硝石、花崗岩や凝灰岩などと歴史の関係を調べていた。 従来の「風土」論は主に気候や植生が中心であった。そこから気質や精神、文化との関連を説明するのであるが、多分に国粋主義的…

ポスト・オリエント学と水銀朱(辰砂):ユーラシア情報文化圏交渉比較環境人文学として

水銀朱(辰砂)の用途 ①「朱」として顔料、装飾的要素に ②「水銀」を精錬し、金をアマルガムめっき(中世以降は鏡の研磨にも使用) ③「朱」や「水銀」を薬として使用(殺菌・ミイラ化) ④水銀と硫黄から化学的に合成する過程を、錬金術や神話などシンボル化 …

We Shall Never Surrender...

一般的に、西洋は現実主義、東洋は神秘主義というイメージが根付いている。しかしながら、中国は現世利益的、インドでは思弁的、さらに道教は理想主義、儒教は現実路線……など、言ってしまえば何とでも言えるのであって、そのイメージは産業革命、帝国主義以…

文化圏研究叙説

歴史研究は時代の鏡である。研究者は周囲の環境から何かしら影響を受け、みずからの研究が歴史という大河に「一石を投じる」「波紋を広げる」ことを願う――世の中の関心に少しでも寄与できるように、みずからの得た知をフィードバックしようとする。 しかしな…

辰砂:文化と知識のネットワーク

空海と水銀、鍍金技術の関係 丹生明神……水銀 虚空蔵加持……黒雲母、ウナギのタブーと「ヲ」を持つ蛇のアナロジー 尾張-美濃‐近江‐山城-丹後:辰砂文化圏と 大和-葛城(生駒)-和泉-紀伊(熊野)-伊勢:辰砂文化圏との、 平安期における統合 その前段階として…

名誉フェロー号 授与について

ご愛読の無識者(むーしきしゃ)の皆様 ツイッターでも告知しましたとおり、この度マツノヤ財団 知域総合人文学研究所は名誉フェロー号を愛読者全員に授与しております。 無料、無制限、無駄の三無がそろっており、特典としてこのブログ及びnote、pixivの無…

人文学的「情報機関」について

人文学はただ専門的に研究されるだけではなく、それを総合的に集約し、分析する場を必要としている。 再三述べてきたことだが、文系学部の知識は役に立たないといわれる。歴史や哲学、文学は、娯楽や教訓くらいにしか認識されていない。大学院に進学し、専門…

自粛の黙示録(Apocalypse Nowadays)

出口の見えない自粛がつづく。テレビを見ていてもSNSを眺めていても、誰々はこうして我慢している、だからお前らも自粛しろだのとやせ我慢の見せ合いになってしまっている。あるいはお国のためにと見栄を張り、マスクやガウンづくりに精を出す。 すっかり戦…

伝説リバイバル考:オオクニヌシ、祝融、海洋交易

前日に引き続き、斜め読みの成果を。 大国主と祝融、蚩尤の関係性については、梅原猛がもう創作で行ってしまっているらしい(何を考えても二番煎じになるのは悩ましい)。それはともかく、八十神のような兄弟神を持っていた祝融や蚩尤の記述、そしてかれらの…

伝説リバイバル考:古代中世詩劇史論稿

とりあえず、ブログ開設以降の思考をまとめてみる。 matsunoya.hatenablog.jp ポスト・オリエントの二つの交易路 matsunoya.hatenablog.jp matsunoya.hatenablog.jp オリエント・ペルシア・インド北部・チベット・中国北部・朝鮮(シルクロード) ケルト・ゲ…

有用性と消費、そして聖性についての考察

「人類学」的な思考で歴史や社会をごたまぜにして文化を論ずるのはあまり好みではないのであるが、すこし論じてみたいテーマがある。ゆくゆくは共時性や通時性を考察しうるものではないかと思うのだが…… 近代科学はおもに近世ヨーロッパの貴族、商人や地主た…

精神というフィクション――劇的詩学序説

言語はもともと集団の生、祭祀儀礼のためのもので、個の領域はその派-生である。 自然に適応するための労働や技術のために「詩」があり、そこから空間や時間のための思考、「風土」や「こよみ」の知識の蓄積も生じる。詩のリズムと表現物、そして社会的な関…

文化のネットワークとしてのことば

これの続き。 matsunoya.hatenablog.jp わたしは「辞典」形式の語源研究にも、「作文」主体の文法教育にも納得していない。以前示した立場として、古典教養は劇や儀礼と密接に関係しており、「集団語」としての代名詞「われ」「なんじ」「それ」が、そうした…

来たるべき労働観の変化:「労働運動」から「労働運用」へ

新型コロナウイルスによって経済活動が大きく変貌しようとしている。しかも、学校行事や地域のイベント、そして「東京五輪」といったここ1年の動向だけではなく、テレワークや時差出勤など、今まで梃子でも動かなかった慣習的な働き方への見直しをもともなっ…

漢字とその文化圏の研究について――反起源論、そして後藤朝太郎

漢字の起源という学問分野に興味をもつ人間は多い。かくいう私も、白川静の「常用字解」や「字統」から起源に興味を持ち、藤堂明保の漢字家族論に惹かれたひとりである。その後西洋史学に進んだため、輓近の研究には触れられていないのだが、これらの漢字研…

学融機関論――「学行」構想

これらの続き。 matsunoya.hatenablog.jp matsunoya.hatenablog.jp まえに「学財閥」という、学問的にも経営的にも厳しくなった大学を、地域や企業が銀行とともに再建に取り組み、学生の消費や就職を囲い込むようになるのではないか、という予測を述べた。今…

学融資本論――客観性と観客性

これの続き。 matsunoya.hatenablog.jp 景気次第ではあるものの、この数年のうちに経営破綻、機能不全に陥る大学や大学院はおそらく国公立、私立を問わず増えるのではないか、と考えている。学生は学生で高校卒業世代が少なくなるだろうし、学費の負担も重く…

情報文化圏交渉比較環境人文学:継承と変容

matsunoya.hatenablog.jp 祭礼……風土(空間)とこよみ(時間) 異界観……交易や地理認識の反照 詩学……語源意識と隣接語群からの借用 汎ユーラシア的移動・交渉と知識集積……物語の発生の総合的考察 「シュメル神話」と「中国神話」の比較(先行研究あり) メソ…

英語力とはなにか

世の中には「英語力」ほど珍重されているものは他にないと思う。その事実こそがわが国の英語教育、ひいては言語教育観の貧しさを端的に示している。英語力なる得体の知れぬ力で英語は「話されている」のだろうか。この巷説の裏を返せば、日本語を使うのに日…

学融商品論ーー不可視の大学、または図書館

前まえから考えてきた学融機関について、少しずつ計画をはっきりさせていこうと思う。 matsunoya.hatenablog.jp 書籍がなぜ売れないのか、高校生や大学生のレベルがなぜ低いままなのか、人文学はなぜ社会の役に立たないのか……ほとんどの意見は文句を垂れ、問…

情報産業と人文学的知

いまのように漫然と人文学的知が利用されている状況を変えたい。 本が売れない、活字が読まれないという状況が何年も続いている。それは、社会がもはや欲望とか帝国とかいった理念を共有せずに細分化を重ねていった結果のようにも思える。本の形をとらなくて…

情報文化圏交渉比較環境言語人文学概論

表題に挙げた「情報文化圏交渉比較環境言語人文学」は、以前述べた「ポスト・オリエント学」の言い換えである。この1ヵ月の考察で、だいぶ構想が煮詰まってきたので、少しなりとも目的が伝わりやすいように専攻分野名を考えてみた。 matsunoya.hatenablog.jp…