マツノヤ人文学研究所

独断と臆見による人文学研究と時評

辰砂:文化と知識のネットワーク

空海と水銀、鍍金技術の関係

 丹生明神……水銀

 虚空蔵加持……黒雲母、ウナギのタブーと「ヲ」を持つ蛇のアナロジー

 

 尾張-美濃‐近江‐山城-丹後:辰砂文化圏と

 大和-葛城(生駒)-和泉-紀伊(熊野)-伊勢:辰砂文化圏との、

 平安期における統合

 

その前段階としての「文学」

 

古事記

 真言宗寺院に保存された、古代の鉱脈の歴史

 「ヲ」の思想…「ヲ」の霊である大蛇、「ヲ」の生えた人間

 オオクニヌシスクナヒコナ

 ヤマトタケル、白鳥伝説

 道教的な文脈、ペルシア、バビロニア神話との連関

 

日本霊異記」……著述した景戒は紀州の人で行基の門人?

 神仏習合にいたる道のり、神と仏の資源争奪戦

 目一つの鬼

 役行者

 

万葉集

 都市生活者と水銀文明、「煉丹」観

 真金ふく-丹生

 竹取翁伝説

 

地域……生産地である金鉱や水銀鉱から、消費地である宮都へ

 泉・川の女神と山の女神

 

 御霊信仰と山車(だんじり)……だんじりを丹散りと考える

 

 現在の山鉾にみられる山伏、道教崇拝の名残

 八幡宮天満宮信仰とハニ(赤土)……土師氏、丹治比氏と天神祭

 鉄(代赭、陶土)を含んだ土壌と、辰砂を産出する土地の両義性

 

 墳墓を中心とした聖地巡礼と、都市に来訪する芸能民

 農耕民と狩猟・商工・聖職・芸能などの特権との交点

  産業革命以前の未分化で拡張的な農業共同体

  漫才、傀儡、猿楽、舞楽(守屋毅)

  歌舞音曲と鍛冶のアナロジー……笛・太鼓はふいご、鉦打は精錬

  イメージ化される交代儀礼と宗教体験……かぶき、妖怪、鬼などの見世物へと変化(服部幸雄

 

 御所、離宮の拡張……鳥羽(桂川の採金地、交通要衝)白河(鴨川、高野川沿岸)

 

象徴に関する論考

 

神格

 イザナギ(タガの神、水銀に比定)とイザナミ(ユワの神、硫黄に比定)、西洋錬金術と逆

 もともと青銅、鐸(さなぎ)の神だった?

 スサノオ(朱砂の男?)

 

 稲荷……イネを負うと「ネ/ナ(金属)」を負う……ネ/ナは丹(二)とも同源かもしれない

 阿古とアカ……蚕(機織り)、卵(卵生伝説、宇宙卵)、小児(赤子)

 垢にまみれたものくさ太郎は多賀明神となる。光明皇后の施浴。

 

笹(湯立神事)・竹(タケルや建部、多賀……水銀と関係?)

 佐藤(百足退治の藤原秀郷)に次いで、高橋と佐々木が多いこともうなずける。

 古代・中世の鉱山(神域)とこれらの苗字が関連しているのではないか。

 英語圏にSchmidtとかSmith、フランス語圏にLefebvreが多いことからも類推

 

太陽と烏、月と兎

 道教的昇仙のイメージ

 太陽と烏はミトラス教(を介しギリシア・ローマ)、月と兎はインドと共通

 オリエント学を通じ「ミトラス教」インド学を通じ「インド」と認識された文化が「伝播」したのではなく、シルクロードや海洋の交易で発生した文化がそれぞれ「分化発展」したと考えるべきか?(井本英一)

 辰砂に込められた死者再生のイメージは、「煉丹」「賢者の石」に分化

 

十干十二支、二十八宿、北辰信仰

 陰陽五行説が農耕共同体において変化(吉野裕子

 かぐや姫五行説…火浣布(火)竜の首の玉(水)燕の子安貝(土)蓬莱の玉の枝(木)、仏の御石の鉢(金)……林久史(2015)「教育ノート 竹取物語錬金術

 

水の神、山の神

 廃坑からの出水、また川での選別作業など、水と切り離せない

 水商売……悪所での巫女、遊女とのあそび

 山姥の包丁、魔女の釜……東西問わず鬼神には鍛冶のイメージが付く?

 竜神崇拝……「辰(タツ)」と「辰砂」の混同が各所にみられる。

 清姫が竜に化し鐘ごと安珍を焼殺、竜神の住む淵に鐘を投げ入れると降雨などは、

 「雲が立つことの象徴としての竜」「鐘(大元は銅鐸?)鍍金のための水銀使用」

 などが複雑に絡み合い、農耕儀礼化したものと考えられる。(高谷重夫

 

性的なシンボル

 道祖神、石神、庚申崇拝

 歓喜天……リンガとヨーニ

 道鏡高野聖、「立川流」……民間聖職者による「性」の宗教的支配が、道徳へ

 古代の秘儀や錬金術における「結婚」のように、鉱物の変化を示す可能性

 穀霊的な神と巫女との「同衾」は、鍛冶的な文脈でも読み直せる

 

死者と聖人

 鍛冶は死者をタブーとしない……貴人の葬儀などに従事

 古墳などのまわりに集住?……死者を記憶、芸能の発生

  キリスト教なども同じ過程をたどったのではないか(古代信仰の聖人譚改変)

 「ケガレ」意識が広まると、神社は死を忌避し、分離しようとする

 ……神仏習合や神宮寺などによる分化、僧兵など半俗の兵力を蓄積

 巡礼による商工業の発達、鎌倉期に宗教運動の高まりでさらに分化(天台宗

 勧進などの芸能民化(真言宗)六斎念仏(浄土宗)

 

 農耕が商工業から切り離され、また「民衆」文化が農耕神話の延長として位置づけられることで、芸能と信仰の混淆状態(アマルガム)は埋没していった。辰砂の伝説も忘れ去られ、錬金術の奇怪なイメージが先行することになる。