マツノヤひと・もよう学研究所

独断と臆見による人文学研究と時評

2024-01-01から1年間の記事一覧

和歌以後の塩文化史仮説……西行・芭蕉・歌舞伎

「藻塩」から「潮干」へ 前稿では、凡そ壬申の乱から兵站として塩産地が重視され、征夷と同時進行していた伊勢物語の世界で描かれる「塩竃」の世界がたんなる遊楽ではなく、首都平安京の食糧基盤の増強や、軍事的示威活動を秘めていたのではないか、という仮…

伊勢物語と塩――百人一首論の序章として

源融という公卿がいる。嵯峨天皇の皇子にあたり、臣籍降下して源姓を賜った。「河原左大臣」の異名で知られる。賀茂川の河原に邸宅を構え、陸奥の塩竃を模して塩を焼かせたことで殊に名高い。その推定地には現在東本願寺の渉成園が造営されている。 また、嵯…

竹取物語と「易筮」

竹取物語は日本最古級の作り物語として知られている。その起源については中国起源など諸説が唱えられているが、本稿では竹取が竹工芸と「易筮(筮竹を取る)」とのダブル・ミーニングではないかという仮説を立て論じる。 夬卦と姤卦……山本唯一説 先行研究は…

ひともよう研究ノート

ひともよう研究ノート 神秘思想から哲学へ――太陽神崇拝とその文化表象 太陽神崇拝と聖地、祝祭 人間同士の協業が衣食住をより善いものへと変えていく 貯蓄から所有へ……衣食住の全くの変化。他者との共同体=連関構造へ 公正・正義についての取り決めが必要に…

やまとうたの原像(景観から読み解く百人一首)

やまとうたの原像(景観から読み解く百人一首)人丸から猿丸へ――定家の和歌改造論 なぜ、読み人知らずの和歌を天智天皇の和歌としたのか? なぜ、俊成の和歌と猿丸大夫の和歌が似ているのか? なぜ、似た歌趣の和歌(特に難波江の和歌)が多いのか?百人一首…

ひと・もよう学序曲(治水と説話)

若尾五雄の独創的な着眼点は、巷間彼の業績として伝えられている「鉱山民俗学」や「河童は渦巻である」ではない。 若尾の説の分かりにくさ、とくに論証の弱さとしてとらえられた所は、そうした彼の思考の結節点に至る様々なプロセスが無視され、語呂合わせな…

「ひと・もよう学」巻頭言――2024年、若尾民俗学の継承

今をさかのぼること30年前、ある老人が大阪・岸和田でその生涯を終えた。 もと産婦人科医。生涯を懸けて「物質民俗学」なる学問をとなえ、岸和田の史跡研究から発展した「松浦佐用姫伝説は土木工事伝承」「鬼・修験は産鉄民」「河童は渦巻である」などの主張…